冷蔵庫の設定は合っていた。でも、苗は設定温度を見ていない

2026年10月26日 2026年10月29日
冷蔵庫の設定は合っていた。でも、苗は設定温度を見ていない

「設定は合っているのに、実際の温度が高い」

冷蔵処理中のいちご苗を見回った時のことです。

冷蔵庫の設定は12℃。ところが、庫内で測った温度は14.5℃でした。

機械の表示だけを見れば、設定は間違っていません。しかし、苗が感じているのは操作パネルの数字ではなく、実際の温度です。

そこで設定を10℃に下げ、実測で約12℃になるよう調整しました。

わずか数度の差に見えますが、花芽分化や苗の状態をそろえたい時期には、見過ごせない差です。

設定温度は「お願い」、実測温度は「結果」

設定温度は、機械へお願いしている数字です。

その通りの環境ができているかは、別に確かめなければなりません。

外の気温、庫内へ入れた苗の量、冷気の流れ、温度計を置く場所、扉を開けた回数。さまざまな条件で、設定値と実際の温度に差が出ます。

同じ庫内でも、入口付近と奥、上段と下段で温度が違う可能性があります。

機械が故障していなくても、苗にとって望んだ環境になっていないことはあります。

なぜ、いちご苗を冷蔵処理するのか

いちごは、ただ大きな苗を植えれば予定通り収穫できる作物ではありません。

苗の中で花になる準備がどこまで進んでいるかを見ながら、定植時期を決めます。気温が高い時期には、冷蔵処理などを使って環境を整え、花芽分化を進める管理を行います。

ここで温度や水分の管理が合わないと、苗が傷んだり、花芽分化の進み方がそろわなかったりします。その差は、定植直後には小さく見えても、後の開花や収穫時期に影響します。

だから、冷蔵庫へ入れた時点で安心してはいけません。

数字と苗の両方を見る

確認するのは温度だけではありません。

設定値を見る。別の温度計で実測する。前日からの変化を記録する。そして最後に、葉の張り、色、培土の乾き具合など、苗そのものを見る。

数字が正常でも、苗に異変があれば原因を考えます。反対に、見た目に大きな変化がなくても、温度のズレが続いていれば早めに調整します。

数字か経験か、どちらか一方を選ぶのではありません。

数字で違いを見つけ、現場で確かめ、記録を次の判断へつなげます。

一回の測定ではなく、変化を見る

温度は、一度測って終わりではありません。

測った時刻、設定温度、実測温度、苗を入れた量、扉を開けた状況を残しておけば、翌日との違いを比べられます。設定を10℃へ下げて実測が約12℃になったことも、記録があるから調整の結果として確認できます。

もし再び温度が上がれば、外気温の影響なのか、冷気の流れなのか、機械の能力なのかを絞り込みやすくなります。

経験による「何となく高い気がする」は大切な気づきです。そこへ記録を加えることで、ほかのクルーにも共有できる判断材料になります。

個人の感覚で終わらせず、農園全体の経験へ変える。それが記録する意味です。

失敗は、次の確認項目へ変える

以前、設定は間違っていないのに、冷蔵処理した苗が傷んだことがありました。

苗が傷んだ事実は元に戻せません。できるのは、考えられる原因を一つずつ確認し、次回の確認項目に変えることです。

設定を見る。実測する。苗を見る。記録する。場所による差も疑う。

確認が増えるほど、作業は少し面倒になります。

でも、その面倒が次の失敗を減らします。

機械の数字を疑うことが目的ではありません。機械の数字を、苗が置かれている現場の事実で確かめることが目的です。

農業では、画面に出ている一つの数字よりも、その数字の先で植物がどう反応しているかを見る必要があります。

設定は合っていた。それでも実測する。

この一手間が、次の収穫をそろえるための大切な仕事です。

いちごの収穫は、苗を植えた日よりずっと前の管理から始まっています。冷蔵庫の中での数度の差も、後から見れば収穫時期や作業計画に関わる差になるかもしれません。

目の前の数字を合わせるだけでなく、その数字が数か月後のいちごへどうつながるかを考える。植物を育てる仕事では、今の確認が未来の結果をつくります。

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