越後姫の苺飴が届いた。でも、まだ商品は完成していなかった
「高橋さん、荷物が届きました」
クルーに呼ばれて段ボールを開けると、中に入っていたのは新商品の「果汁ゅれる苺飴 越後姫」でした。
農園で収穫し、冷凍しておいた越後姫を原料にして、長野県の加工先へお願いして作った苺飴です。箱を開けた瞬間は、やはりうれしい。頭の中で考えていた商品が、ようやく手で触れられる形になったからです。
ところが、その時点では値段も、販売方法も、送料も、商品の伝え方も決まっていませんでした。
商品が届いたことと、商品が完成したことは同じではありません。
まず、自分たちで食べて言葉を探す
翌日、サンプルをポリポリ食べながら、商品の特徴を一つずつ考えました。
いちごの味がする。色がきれい。光に当たると少し透けて見える。そして、普通の飴とは違って、かじると「ポリッ」「サクッ」と軽く崩れる。
ただ「おいしい飴です」と言うだけでは、この違いは伝わりません。
お客様が知りたいのは、作り手がどれだけ苦労したかよりも、口に入れたときに何を感じるのか、誰とどんな時間に楽しめるのかということです。
そこで、硬くて長くなめるだけの飴ではなく、思わずかじりたくなる食感を、商品名や説明の中心に置くことにしました。
商品の外側にも、決めることがたくさんある
中身ができた後にも、決めることは続きます。
一袋にどれくらい入れるのか。袋をどんな見た目にするのか。一箱に何袋入れるのか。どの売り場なら手に取ってもらいやすいのか。送料を含めても買いやすい価格にできるのか。
自社ECで一袋だけ買う方と、道の駅やお土産店で初めて見つける方では、商品の見え方が違います。販売場所が変われば、必要な説明も変わります。
さらに、箱を開けたときに割れていないか、暑い場所や寒い場所で状態が変わらないか、安定して同じ商品を用意できるかも確認しなければなりません。
「作れる」と「売り続けられる」の間には、思っていた以上に多くの仕事があります。
生果だけでは届けられない季節にも、越後姫を楽しんでもらう
越後姫の生果を届けられるのは、収穫できる季節に限られます。実がやわらかく、県外へ送る時には状態にも気を配らなければなりません。
一方、冷凍したいちごを加工品へ変えられれば、収穫期以外にも越後姫を知ってもらえます。形や大きさの理由で生果の箱には入れにくくても、味や香りを生かせるいちごもあります。
ただし、「越後姫を使った」というだけで商品が選ばれるわけではありません。原料の物語は入口であり、最後は一つの商品としておいしく、分かりやすく、買いやすくなければ続きません。
農産物を無駄にしないことと、お客様が欲しい商品を作ること。その二つが重なって初めて、加工する意味が生まれます。
お客様の一言で、楽しみ方が増えていく
試していただいた方からは、「無糖のヨーグルトにのせたら、酸味とほんのりした甘さ、カリカリした食感が合いました」という感想も届きました。
作った側だけで考えていたときには、思いつかなかった楽しみ方です。
商品は、農園の中だけで完成するのではありません。お客様が食べ、感じたことを教えてくれて、使い方や伝え方が少しずつ育っていきます。
感想をいただいたら、良かった言葉だけを集めるのではなく、「量はどう感じたか」「食べにくさはなかったか」「どんな場面なら買いたいか」まで聞きます。作り手が気に入っている点と、お客様が価値を感じる点が同じとは限らないからです。
良さが伝わるところまでが商品づくり
箱を開けた瞬間、「できた」と思いました。
でも、本当はそこがスタートでした。
味や食感を確かめ、価格と送料を考え、包装を整え、どこで誰に届けるかを決める。そして、初めて食べる方にも想像できる言葉にする。
作り手の思いだけを話すのではなく、食べる人の時間から考える。
商品は、作って終わりではありません。良さがきちんと届き、もう一度食べたいと思ってもらえる形まで整えて、ようやく完成に近づきます。
新潟県上越市の苺の花ことばから、農園の日々をお届けします。

