仕事の「ベース」がズレると、みんな頑張っているのに噛み合わない
仕事で大切なのは、技術や経験だけではなく、最初に「ベースを合わせること」だと感じています。
同じ「いい仕事をしよう」という言葉でも、人によって頭に浮かぶものは違います。
早く終わらせること。ミスを出さないこと。見た目をきれいにすること。お客様を待たせないこと。自分が次の作業へ進みやすくすること。
どれも間違いではありません。
ただし、優先順位がそろっていなければ、全員が一生懸命なのに仕事が噛み合わなくなります。
農園では、同じ作業でも判断が続く
いちごの仕事は、決められた動きを繰り返すだけではありません。
収穫なら、色づきや傷みを見て、今採るか次回へ残すかを判断します。選果なら、どの規格へ分けるかを考えます。箱詰めなら、速さだけでなく、届いた時の見た目や傷みにくさも大切です。
忙しい日に「早くしてください」とだけ伝えると、確認を省いて速くする人もいれば、手順を変えずに自分だけ急ぐ人もいます。
こちらが求めている速さと、相手が考えた速さが同じとは限りません。
注意する前に、基準を伝えたか
「どうして分かってくれないんだろう」
そう思った時ほど、自分の頭の中にある基準を言葉にできていないことがあります。
今日は納期を守ることが最優先なのか。品質を落とさない範囲で速くするのか。お客様の前だから、見た目まで整える必要があるのか。異変を見つけたら、作業を止めてでも共有するのか。
そこを伝えず、結果だけを見て注意しても、相手は次に何を変えればよいか分かりません。
私には当たり前でも、相手の頭の中には入っていない。
仕事のすれ違いは、能力不足よりも、基準の共有不足から起きることがあります。
手順書だけでは、迷った時の答えにならない
手順書には、「何をどうするか」を書けます。
しかし、すべての状況を先回りして書くことはできません。天候、苗の状態、注文数、クルーの人数によって、現場は毎日変わります。
だから必要なのが、迷った時に戻れる判断基準です。
安全に関わることはすぐ止める。品質に影響する異変は隠さず共有する。自分の作業だけでなく、次の人が困らない状態で渡す。お客様へ約束したことを基準に考える。
こうした共通の考えがあれば、細かな指示がなくても方向を合わせやすくなります。
「分かりました」を、確認の終わりにしない
伝える側は、説明しただけで安心しがちです。
しかし、相手が「分かりました」と答えても、頭の中に同じ完成形が浮かんでいるとは限りません。
たとえば箱詰めなら、実際に一箱作ってもらい、どこを見て判断したかを聞きます。収穫なら、採る実と残す実を一緒に見比べます。口頭の説明を、実物の確認までつなげることで、初めて基準のズレが見つかります。
間違いを指摘するためではありません。仕事を始める前に、お互いの「分かった」をすり合わせるためです。
教えた回数ではなく、相手が同じ基準で判断できるようになったかを見る。新人への引き継ぎでも、ベテラン同士の仕事でも、この確認が必要です。
会社の文化は、毎日の小さな判断に出る
会社の文化というと、壁に掲げる立派な理念を想像します。
でも、現場で文化が表れるのは、忙しい時や失敗した時です。
失敗を隠すのか、すぐ共有するのか。自分の担当が終わればよいのか、次の工程まで見るのか。困っている人がいた時に、声をかけるのか。
それを一度説明しただけで、全員の基準がそろうわけではありません。朝の打ち合わせや振り返りの中で、具体的な出来事と結びつけながら何度も共有します。
苺の花ことばは大きな会社ではありません。人数が少ないからこそ、一人の判断がその日の収穫、発送、お客様への対応に直接影響します。
少人数なら何となく伝わると思いがちですが、実際は反対です。担当が重なり、一人が複数の仕事をするからこそ、判断の土台を言葉にしておく必要があります。
全員が同じ人になる必要はありません。それぞれの得意なことや考え方が違うから、チームになります。
ただ、向かう方向は合わせる。
一人ひとりの頑張りを、ばらばらの力で終わらせないための土台。それが、仕事の「ベース」なのだと思います。
新潟県上越市の苺の花ことばから、農園の日々をお届けします。

